MO'SOME TONEBENDER - Baseball Bat Tenderness

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福岡魂の爆裂ロックンロールバンドのニューアルバム。 前作「Strange Utopia Crazy Kitchen」から1年5ヶ月ぶりとなりますが、あんまり待たされた感がなかったのはフロントマンの百々さんのソロ作やgeek sleep sheepの活動などがあったためでしょうね。
前作はモーサムのこれまでの冒険の総決算的なヴァラエティ豊かな内容になっていましたが、今回はライヴの熱気を封じ込めたようなひたすらド直球なロックンロールアルバムになっています。なので、曲単体で聴くというよりは頭から最後までぶっ通しで聴くのが正解って感じがします。
小難しい事しないであえてラフに、しかし手は抜かずに、すっ転びそうになりながらも前に前に全力ダッシュな潔さがよくでています。
「Super Nice」、「Sing!」と微妙なアルバムが続いたときは流石にファンやめようかと思いましたが、「Struggle」以降イイ感じに転がってきてる感じがします。
こっちをハラハラさせながらも自らのスタンスを崩さず小綺麗にまとまらないこのバンドはやはり好きですね。

THE NOVEMBERS - Zeitgeist

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僕が思う日本で指折りの「真摯な」ロックバンド、THE NOVEMBERSの4thアルバム。
今回は自主レーベル「MERZ」の設立(やっぱりMerzbowから取ったのかな?)、独自の販売方法など単なるニューアルバムの発売ではありませんでした。

僕はTwitterでオフィシャルアカウントをフォローしてるので発売までにこういった大騒ぎを知っていて、聴くまでにえらいヘヴィな内容になってるんじゃないかな…と思い、なかなか聴き始めるまでに時間かかりました。
THE NOVEMBERSの音楽はフロントマン小林祐介という人の持っている思想がかなり前に出ているところがあり、歌詞とサウンドは切って放せません。
そのため、僕は片手間に聴くというのが彼らにとって失礼だと考えてしまい、しっかり対峙できるコンディションの時に聴こう…とか思っちゃうんですね。

そうしてようやく一通り聴いた感想ですが、これは現時点での最高傑作じゃないかと感じました。
自主レーベルの設立と関係あるかはわかりませんが、これまでの作品に漂っていた息苦しさがかなり軽減されヘヴィなサウンドの曲はありながらも水を得た魚のように解放的な雰囲気になっています。(もちろん明るい 軽やか ということではありませんし、ズルズルと重い曲もありますが頭からすり潰されるような感じではなくなっています。)
そして全体の流れ、一つ一つの曲の練り込み具合も完璧と言ってよく、かつ音楽とヴォーカルのテンションが片手間に聴くことを許しません。どうしても音楽に意識が引き戻される、そんなオーラも感じます。
そして歌詞。小林祐介さんが書く歌詞は前々から変わっていないのだなと思いました。 人の真似なんかしないで自分は自分らしく-後悔しないために毎日を全力で生きたい とでも言うような。
これらのメッセージが押し付けがましくなく、また偉そうなポーズにも聞こえないのが何よりの彼らの魅力だなと思います。
バンド名は11月、つまり秋ですが聴いていて思い浮かぶのは冬の朝のピンと張りつめた空気。大きく息を吸い込むと綺麗な空気が体をめぐり目が覚めるような、そんな気持ちになります。

The Bug - Pressure

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The BugはイギリスのKevin Martinというミュージシャンによるハードコアレゲエプロジェクト。 このPressureは2003年リリースの2ndアルバムです。
レゲエと聞くと僕はどうも駅やコンビニの周りでたむろするあまり近付きたくない方々を想像してしまい、ジャンル名だけで敬遠しがちなのですが、このアルバムはそうでもありません。
ビートやサウンドの質感はレゲエというよりはダブステップに近くかなりドープ。確かに踊れますが、下着モロ出しでヘイヘイ!って感じではなく1人の世界でうつむいてゆったりステップを刻む感じです。
多彩なゲストヴォーカリストを招いているのでヴォーカリストによってはレゲエらしくアジりまくってる曲もあるのですが、どうもビートと独特のヘヴィでドープなサウンドのせいでナンパな雰囲気にはなっていません。この辺り、イギリスというお国柄もあるのかしら…と気になり少し調べたところ、このKevin Martinという人はJustin K BroadrickのTechno AnimalやICEにも参加しているのですね。
それで何となく納得しました。似た畑の方なのだなぁと。この辺りのアルバムも聴いてみるとサウンドの共通点が見えてきて面白いです。
しかしJustin先生周りのミュージシャンの作品はサウンドの先鋭性という点で聴いててとてもスリリングです。インダストリアル、ヒップホップ、そしてこのレゲエという音楽をどんどん拡大・変容させていく姿勢は音楽好きにはたまらない。

Bo Ningen - Line The Wall

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UK在住の日本人サイケデリック・ロックバンドBo Ningenの2ndフルアルバム。 2012年発表。
まずヴォーカルTaigenの異様なハイトーンボイスが耳を惹きます。 なかなか他では聴けないような歌唱法ですね。 パッと聴き似た声というと凛として時雨のTKが思い浮かびますが、あの歌唱とは表現のベクトルが全く違います。 Taigenはパラノイア、TKはJ-Rockによくある青臭さのようなものでしょうか。(解釈が甘いかもしれません、すみません)
そしてサウンド。1stの方は「3×3×3」や「ミーのカー」辺りのゆらゆら帝国フォロワー(かなり高次元な)な感じがしていましたが、2ndに来てもう完全にオリジナルの個性を獲得しています。
前作の「Koroshitai Kimochi」や「Gasmask Rabbit」のようなポップソングはなく変わりにアルバム1枚を通して一気に聴かせるように作られています。
そしてひたすらヘヴィで硬派なRockサウンド。 メルツバウ灰野敬二などのノイズミュージシャンと共演しているせいでノイズミュージックの要素もあるみたいに語られますが、聴いてて僕が思い浮かべるのはレッドツェッペリンやドアーズなどのバンドです。
1.「Soko」では2本のギターが描く眩惑的なサイケデリックノイズにドラムとベースがダンサブルなビートを刻み、7.「Ten to Sen」ではアンビエント色を強めゆったりと聴かせる。そして9.「Daikaisei Part 2」はアルバム中最高のハイライトが訪れます。この曲の展開、サウンドの暴虐的な快楽はホントに凄い。
色んなバンドの寄せ集めみたいなサウンドではなく強靭なグルーヴと自分たちだけのサウンドを研磨していこうとする姿勢は本当にカッコいいです。

動画サイトでライヴバフォーマンスも見ましたが機材を叩き割るかのように暴れ回りながらもそれが全くポージングではない、どうしようもなくROCK的エネルギーに満ちていてこのバンドは本物だと思えました。 今最もライヴが見たい新人バンドです。



Front Line Assembly - ECHOGENETIC

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カナダの大御所EBM/ダーク・エレクトロユニットの15th。2013年発表。
今作は前作「AirMech」のダブステップ/ブロステップの流れをさらに進め深化させたものと言えます。 いわばダーク・エレクトロ×ブロステップといったところでしょうか。
這い回るベース、奥行きのある空間的なシンセサウンド、マッシヴなボディビートはそのままに、今までのように速さで攻めるのではなくもったりとしたグルーヴを効かせたサウンドになっています。
全体を通じてテンションが一定でありわかりやすいキラーチューンもありませんが、長年のキャリアに裏打ちされた職人的な仕上がりで最後まで一気に聴かせます。まさにいぶし銀ですね。

The Cooper Temple Clause - See This Through and Leave

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今は解散してしまったイギリスのロックバンドのデビューアルバム。 2002年発表。
音楽的にはいかにもRadioheadPrimal Screamが好きな若者のエレクトリック・ロックって感じですが、それらのバンドを超えてやる!っていうがむしゃらなエネルギーを感じます。 ヴォーカルがかなりまんまリアム・ギャラガーなのはご愛嬌。
とにかく全体を通じてめちゃくちゃなまでの攻撃性や躍動感が凄まじくてそこに意識がいきがちですが、音の選び方やメロディセンスは本当にイイです。
1.「Did You Miss Me?」のイントロのピコピコ音はその開始数秒で夜のイギリスの町や暗い部屋に誘い込んでくれますし、6.「Digital Observations」はシンセとギターのメロディの絡みが何とも薄ら寒い雰囲気を出しながら徐々に他の楽器が増え盛り上がる展開が素晴らしい。
ちなみに「Did You Miss Me?」は歌詞も個人的に好きです、別れた彼女への恨み辛みを吐き出してるだけ。Radioheadなんかの抽象的でパッと見何が言いたいかわからない歌詞もそれはそれでカッコいいしクールですが、こうゆうスペーシーでヘヴィなロックサウンドに失恋の歌詞を乗せるっていうのはなんとゆうか、ツボです。他の曲もそうゆう若者のヘタレで鬱々としてて少しパラノイアックな呟きばかり。
「壁の方を向いててくれ、俺は飲んでるだけなんだ」
「恋愛の方はどう? うまくいってないって? そりゃ、よかった」
「また犬の調教だ、お宅の可愛い娘さんに噛みついてやるように」
これらの歌詞に呼応するように、曲も「Let's Kill Music」を覗いて全てジメジメと暗くて鬱々としたものばかりです。 しかも少し長めのものが多い。
オマケにこのジャケットのアートワーク、よく見てください…ゾッとしますよね? 僕はかなり好きですが。
しかし僕はもうこのアルバムをかれこれ10年以上愛聴しています。
このアルバムにパックされているのはもう戻ってこない若者の無軌道でめちゃくちゃな若さとエネルギー。そして思春期特有の感じやすさなのです。この暗さはそれらを嘘偽りなく表現したらこうなっただけなのです。(…と物凄く個人的に思ってます。)
10年以上失恋とか何か嫌なことあった時に夜の道をこれ聴きながら歩いてきたので、そういう思い出がずっとこのアルバムにまとわりついてたりして、そうゆう意味でも思い入れの強いアルバムだったりします。
音楽的に成熟する前に解散してしまったために認知度が低い彼らですが、UKロックが好きな人には是非とも聴いて欲しいアルバムです。

yelworC - Icolation

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ベルギーのベテランダーク・エレクトロユニットの3rd。 2007年発表。
ユニットと言いましたが、この作品ではメンバーはPeter Devinの1人だけです。(もう一人のDominik van ReichはamGod名義でソロ活動中)
内容は緻密に練り上げられたSF建造物を仰ぎ見るような、重厚でゴシカルかつサイバーなエレクトロサウンド。
僕は映画「エイリアン」で出てきた巨大な宇宙船を思い浮かべます。
ダーク・エレクトロは大抵どこかB級っぽいというか軽い音楽の物が多いのですが(見下してるわけじゃありません、好物ですし)このユニットの音楽は妙な格調高さがあります。 変な飛び道具的な音や派手なギターのサウンドがなく、わかりやすいメロディもない硬派な音作りのせいでしょう。これぞ、真のダーク・エレクトロですね。渋い!
Skinny PuppyのLast Rightsと聴き比べると楽しいかもしれません。非常に個人的な感覚ですが。